美容や健康のための“酵素”という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。
酵素は簡単に言うと消化、吸収、代謝など、私たちの体で行われるあらゆる反応に必要な成分です。
酵素が体によいことはなんとなく知っているという方も多いとは思いますが、今回は酵素と健康な体づくりについてより詳しく理解していただき、ご自分の生活に取り入れて、上手に酵素と付き合っていただきたいと思います。
目次
そもそも酵素とは?
酵素はタンパク質の一種です。
私たち人間(生物)にとって必要不可欠である体内での化学反応を引き起こすための物質としての役割を担っています。
酵素は化学反応を起こし、摂取した食べ物の消化、吸収、代謝という一連の流れをサポートしています。
しかし酵素には、基質特異性という性質があり、すべての食べ物の成分に作用することはできず、特定の成分のみに作用します。
そのため、私たちの体内には5000種以上の酵素が存在していると考えられています。
酵素の種類と働き
人間の体内には、およそ5000種以上の酵素が存在していると考えられています。
多くの酵素は、人間の体温に近い37度前後、pH7(中性)の環境下で最も活発に機能する一方、熱に弱いという性質があり、熱が加わると変形し、酵素の機能が失われてしまいます。
酵素は、体の中で作用する「消化酵素」と「代謝酵素」、体の外から取り入れる「食物酵素」に大別されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
消化酵素
消化酵素は、摂取した食べ物から取り入れた栄養分を体内に吸収しやすい状態になるまで分解する役割を担っています。
主に、胃液、小腸液、唾液等の中に存在し、消化酵素は3種類あります。
大根やかぶなどには、たんぱく質、炭水化物、脂質を消化するための全ての酵素を含むものもありますが、多く含まれている食品も一緒にご紹介します。
プロテアーゼ
プロテアーゼには、タンパク質をより細かい分子のアミノ酸に分解する働きがあります。
プロテアーゼは玉ねぎ、納豆、パイナップルなどの食品に含まれています。
アミラーゼ
アミラーゼには、デンプンをより細かい分子のブドウ糖に分解する働きがあります。アミラーゼはキャベツ、山芋、かぶなどの食品に含まれています。
リパーゼ
リパーゼには、脂肪をより細かい分子のグリセロールと脂肪酸に分解する働きがあります。リパーゼには味噌、チーズ、ほうれん草などの食品に含まれています。
代謝酵素
代謝酵素は、消化酵素により体内に吸収された栄養分を身体のさまざまな細胞に届ける働きを担っている酵素です。
消化酵素以外の酵素全般のことを代謝酵素と呼んでいます。
体内での新陳代謝の補助、免疫力向上、血流促進、老廃物排泄等、私たち人間の生命維持に関わる重要な役割を担っています。
食物酵素
食物酵素は、食べ物に含有されている酵素のことを指し、体内で機能している酵素の働きを補助する役割を担っています。
食物酵素が不足すると、消化酵素のみで摂取した食べ物の分解、吸収を行うことになってしまいますが、食物酵素が豊富にある場合(食物酵素を積極的に摂取している状態)、食物酵素が消化を補助してくれるため、消化酵素の無駄遣いを予防できます。
食物酵素は代謝酵素には作用しませんが、消化酵素と代謝酵素はお互いの過不足を補い合う相互関係にあると考えられています。
酵素と健康にはどんな関係があるの?
私たちの体の中では酵素がとても重要な役割を担っていることを前述しましたが、健康のためには切っても切れないものであることはお分かりになっていただけたかと思います。
では、不足するとどのような影響があるのでしょうか。
酵素と免疫の関係
代謝酵素の項目でご説明したように、酵素も免疫に関わっています。
さらに、食べたものをエネルギーに変え、古い細胞を新しい細胞に変えるという新陳代謝を上げることで免疫力向上の期待もできます。
酵素は消化、吸収に関わるということは、免疫細胞の7割ほどが存在する腸の働きをサポート、つまり腸内環境を整えるためにも大きな役割を担って免疫力向上に働きかけています。
酵素が不足すると?
体の中で作られる酵素が不足してしまうと、摂取した食べ物の消化、吸収、代謝の力が低下したり、体内の有害物質を処理して尿とともに排泄する反応が低下したり、血流が滞ったりする恐れがあると考えられています。
また、体の免疫反応や体の調節機能にも悪影響を及ぼす可能性があります。
酵素が不足して代謝が低下すると、腸内環境も乱れやすくなり、太りやすくなったり、肌荒れを起こしやすくなったりする等、美容にも悪影響が及ぶと考えられています。
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酵素を効果的に取り入れたい!おすすめな方法
それではどのように酵素を取り入れれば良いのでしょうか。
酵素摂取時の注意点としては、酵素は熱に弱く70度以上になるとその機能が失われたり、水の中で多く破壊されたりする傾向にあるため、加熱時は、焼く、蒸す等の調理法で必要最小限の加熱に留めるようにしてください。
生の果物や生野菜を積極的に摂取する
生の果物や野菜の中には酵素が豊富に含まれています。
特に、その時期の旬な果物や野菜にはより多くの酵素が含まれているため、季節の果物や野菜を積極的に摂るようにしましょう。
野菜の皮部分には、βカロテンやビタミンA、C、Eといった抗酸化作用をもつ栄養分が豊富に含まれているため、抵抗がなければ皮ごと摂取することをおすすめします。
また野菜や果物をすりおろして摂取すると、野菜や果物の細胞が破壊され、酵素が細胞外へと出てくることで、酵素がより活発に作用するようになると考えられています。
ただし、すりおろした野菜や果物は空気に触れることで酸化し酵素やビタミンがどんどん消失していくため、できるだけ食べる直前にすりおろすようにしてください。
発酵食品を積極的に摂取する
発酵とは、微生物の働きを借りて食べ物を消化・吸収しやすいよう分解して変化させるという方法です。
発酵する過程において、微生物は多くの酵素を作り出すため、発酵食品の中には豊富に酵素が含まれています。
また微生物は、発酵している過程でタンパク質やでんぷんを分解してくれるので、体内に摂取した際、わざわざ分解する必要がなく、消化酵素の無駄遣い予防と繋がるのです。
さらに発酵食品は、栄養価が高く、栄養のバランスも整っているため、身体の調子を整える作用も期待できる優れもの。
発酵食品は様々な食品から摂取することで、体に嬉しい様々な有益菌の恩恵を受けることがわかっていただけたのでないでしょうか。
おすすめの発酵食品
- 納豆
- 味噌
- キムチ
- ぬか漬け
- チーズ
- ヨーグルト
- 醤油
- 鰹節
- 酢
知らない添加物を多く含む食品、白砂糖を多く使っている食品を控える
日々の食生活の中で、どんなに頑張って酵素を含む食品を摂取していても、知らない食品添加物を多く含む食品や白砂糖を多く使っている食品も同時に摂取していると、酵素の作用は低下してしまいます。
そのため、ハム、ベーコン、ソーセージ、インスタント食品、菓子等、添加物を多く使用している食品の摂取は控えるようにすると安心です。
もちろん添加物を使用していない商品もあるため購入時に裏面表示を確認する癖を日頃からつけましょう。
また、白砂糖を多く摂取すると消化酵素が大量に消費されてしまうため、市販の甘い菓子類の摂取には注意が必要です。
規則正しい生活習慣を心掛ける
酵素を有効的に取り入れて増やし、その消耗を予防するには、規則正しい生活を送ることが必須です。
夜型生活は体内時計を狂わせ、代謝を悪くさせてしまいますので、下記を留意しましょう。
十分な睡眠時間を確保する
酵素は睡眠中に作られるため、毎日十分な睡眠時間を確保することが重要です。
十分な睡眠時間は人によって異なるので、朝起きてスッキリする、日中眠くならない程度の睡眠を意識しましょう。
暴飲暴食しない
暴飲暴食は、消化酵素の無駄遣いにつながるため控えましょう。
腹八分くらいを目安によく噛んで食べるようにしてください。
食前に野菜(サラダ等)や海藻などを摂取すると、食物酵素が増えるとともに満腹感も得られると考えられます。
体を冷やさない
体を冷やさず温めると、酵素が活性化して免疫力の向上につながります。
冷たい飲み物を控える、首、腹部、足を冷やさない、薄着しない等を心掛けましょう。
ストレスを溜め込まない
ストレス過多は酵素の機能低下につながります。
ストレスを完全になくすことは困難ですが、ストレスを軽減させることは可能と考えられます。
趣味を見つけて楽しむ、軽く体を動かす、腹式呼吸で深呼吸する等、自分なりのストレス軽減方法を見つけて実践してみましょう。
酵素は私たちの健康に大活躍!
毎日の食事で摂取している5大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)は、いくら摂取してもそのままでは体内で有効に活用することはできません。
酵素によってタンパク質や炭水化物、脂質を分解してもらってはじめて私たちの体の中に栄養分として吸収されます。
さらに、吸収された栄養分は酵素の力によってエネルギーへと変換されます。
上記に加えて、ウイルスと戦うための免疫力を高める、体温を調整する、老廃物を処理して排泄する等、酵素は私たちが健やかに生きていくために必要不可欠な働きを担っている重要な存在であると言っても過言ではありません。
毎日取り入れて健康に繋げよう!まとめ
いかがでしたか。今回は酵素と健康について詳しくご紹介いたしました。
体の中で作られる酵素量には限度があり、加齢に伴い減少していく傾向にあります。
また、不規則な生活、ストレス過多、偏食等は酵素生成の妨げになります。
私たちにとって非常に重要な働きを担ってくれている酵素を増やしたり、無駄遣いしたりしないよう、毎日の食事から食物酵素を積極的に取り入れるようにしたり、酵素がより活性化できる身体に整えたりする等を心掛けていきたいですね。