健康や美容への意識が高い人々の間でブームになっている「酵素玄米」。
どのような効果があるのか、普通の玄米ご飯と何が違うのか、よく知らない人が多いのではないでしょうか。
この記事では、食によって体の中から健康維持に努めている管理栄養士が、酵素玄米のメリット・デメリットを紹介します。
酵素玄米の作り方や保存に関する注意点もお伝えするので、酵素玄米の疑問点を解決し、酵素玄米作りに挑戦してみてください。
そもそも酵素玄米とは?
酵素玄米は、一般の人には聞き慣れない言葉ですね。まずは玄米と比較しながら、酵素玄米について知りましょう。
酵素玄米と玄米は何が違うの?
酵素玄米と玄米の違いは、以下のとおりです。
酵素玄米 | 玄米 | |
---|---|---|
見た目 | 赤飯のような赤色 | 薄い茶色 |
食感 | もちもちして弾力がある | 固めでパサパサしている |
味 | ほんのり甘みと塩味がある | 噛むと甘みが出てくる |
材料 | 玄米、小豆、塩 | 玄米のみ |
消化 | 消化しやすい | 消化しにくい |
玄米とは、胚芽やぬかが付いたままの精米されていない米のことを指します。
一般的に食べられているのは、胚芽やぬかを取り除いた精白米です。
この米の胚芽やぬかには、ビタミンや食物繊維が豊富に含まれているため、米の栄養を余すことなく摂取するならば、精白米よりも玄米がおすすめです。
しかし一方で、玄米は水分を吸収しにくい性質があり、食感がパサパサしていたり、固くて消化不良を起こしたりすることがあります。
栄養価の高い玄米を食べたくても、食感に抵抗がある人、体質に合わない人は少なくありません。
酵素玄米は、その栄養豊富な玄米に小豆と塩を加えて炊飯し、3日ほど保温した玄米ご飯のことです。
時間をかけて保温することで玄米が熟成され、甘みが増してもちもちした食感に変わり、消化もよくなります。
小豆と塩を加えているので、赤飯のような見た目と味わいになることも特徴です。
さらに酵素玄米は、健康や美容にもさまざまなメリットが期待できます。
酵素玄米にデメリットってあるの?
熟成させることで食べやすくなり、健康効果も期待できる酵素玄米ですが、デメリットも持ち合わせています。
酵素玄米は、作るのに時間がかかります。
炊き上げるのは炊飯器や圧力鍋にまかせておけますが、保温して熟成させるのに3日ほど必要です。
その間、炊飯器などを占領してしまうため、一度にたくさん炊いて冷凍しておくといった工夫が必要です。
数日間の保温が必須なので、一般的な白ご飯や玄米ご飯よりも食中毒のリスクがあります。
多くの炊飯器の保温温度は、約60〜75℃に設定されています。
この温度に設定されている理由は、60℃以下になると食中毒菌が繁殖しやすくなるためです。
きちんとこの温度に保たれていればまず安心ですが、保温モードが切れていたり、炊飯器のふたを頻繁に開け閉めしたりしていれば、温度が下がって食中毒のリスクが高まります。
酵素玄米はおいしく作るのが難しい、という声も聞かれます。
酵素玄米にはもちもちとした食感があり、玄米に比べて食べやすくなる一方、玄米ご飯特有の匂いが気になる人もいます。
玄米の浸水などにコツが必要なので、おいしく炊けずに酵素玄米をやめてしまう人もいるようです。
酵素玄米の効果6つ
酵素玄米にはデメリットがありますが、もちろんそれを上回るメリットも存在します。ここでは、酵素玄米を食べることで得られる効果を確認しましょう。
血糖値の急上昇をおさえる効果
血糖値とは、血液中にあるブドウ糖の濃度を表す指標です。
食事を摂った直後は、血糖値が上昇します。
この上昇した血糖値を下げるのは、インスリンというホルモンの役割です。
インスリンはブドウ糖を脂肪に変えて、体に蓄えることで血糖値を下げています。
食後に血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌されます。
すると、ブドウ糖からたくさんの脂肪が作られるため、肥満のリスクが高まるのです。
血糖値の急上昇を防ぐために、GI値が低い「低GI食品」を摂ることをおすすめします。
GI値とは、食後の血糖値の上昇率を示す値です。GI値が高い食品は、食後の血糖値が上がりやすいとされています。
反対にGI値が低い食品は、血糖値が上がりにくいことが特徴です。
酵素玄米の材料である玄米と小豆はGI値が低いため、酵素玄米は低GI食品に分類されます。
酵素玄米は食後の血糖値が上がりにくいため、インスリンの分泌をおさえて肥満を防ぐ効果が期待できるのです。
エネルギーの燃焼を促す効果
酵素玄米の主材料である玄米には、白米にはない胚芽やぬかが含まれています。
玄米は、胚芽やぬかに由来するビタミンB1が白米の約5倍、ビタミンB6が約4倍も含まれている栄養価の高い食品なのです。
ビタミンB1は糖質、ビタミンB6はたんぱく質をエネルギーに変換するはたらきをサポートする作用があります。
食事から摂取した栄養素をエネルギーに変えて燃焼させるには、これらのビタミンが必要です。
酵素玄米にも、玄米の高い栄養価は受け継がれています。
効率よくダイエットをするなら、酵素玄米からビタミンB1やビタミンB6を摂取するのがおすすめです。
腸内環境を改善する効果
人の腸にはおよそ1000種類、100兆個もの細菌が生息しているといわれています。
腸内細菌には善玉菌、悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌があり、これらの細菌がバランスをとって存在することで、腸内環境が維持されています。
しかし偏った食事や不規則な生活、ストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増殖すると、腸内環境が乱れて便秘がちになってしまうのです。
酵素玄米の主材料である玄米は食物繊維を豊富に含んでおり、その量は白米の約6倍。
玄米の食物繊維は、腸内で水分を含んで膨張し、腸を刺激して排便を促します。
また一部の食物繊維は腸内細菌のエサとなることで、善玉菌を増やしてくれます。
酵素玄米を食べて食物繊維を摂取すると、腸内環境が改善されて便通がよくなる効果が期待できるのです。
むくみ解消効果
食事から食塩(塩化ナトリウム)として摂取されることが多い栄養素、ナトリウム。
細胞や筋肉が正常にはたらくために必要な物質ですが、摂りすぎるとナトリウム濃度を薄めるために体に水分が貯め込まれます。
この過剰な水分がむくみの原因となるのです。
むくみを解消する鍵となるのが、ミネラルの一種であるカリウムです。
カリウムには、体内の余分なナトリウムを排出する作用があります。
酵素玄米に含まれる小豆には、このカリウムが豊富に含まれています。
酵素玄米を食べるとカリウムを摂取できるため、むくみの解消効果が見込めます。
酵母のはたらき⑤
酵母に含まれるβ-D-グルカンには免疫力を高める作用があると考えられています。
β-D-グルカンは、マクロファージやNK細胞(血中に存在し体の中に侵入した異物に攻撃を与える働き)を活性化する働きがあります。
美肌効果
肌にシミやシワ、たるみができる原因のひとつに、紫外線やストレスなどにさらされることで発生する活性酸素があります。
活性酸素は増えすぎると、体を酸化させて肌にシミやシワ、たるみを作り、老化を促進してしまうのです。
活性酸素の除去には、抗酸化物質の摂取が効果的です。
酵素玄米に含まれる小豆には、抗酸化作用を持つポリフェノールが含まれています。
酵素玄米を熟成させると色が濃く変化しますが、このときに生じる褐色のメラノイジンという物質にも、抗酸化作用があります。
酵素玄米を食べて抗酸化物質を摂取することで、シミやシワ、たるみを防ぎ、肌を美しく保つ効果が期待できるでしょう。
精神安定効果
酵素玄米には、玄米に由来するGABAという成分が含まれています。
GABAは脳や脊髄ではたらく神経伝達物質として、ストレスを和らげたり、興奮を鎮めたりする役割をしています。
つまりGABAには、リラックス効果が期待できるのです。
神経が興奮した状態が続くと自律神経のバランスが崩れ、胃潰瘍や不眠、高血圧といった体の不調をまねくおそれがあります。
酵素玄米に含まれるGABAを摂取することで精神を安定させて、体の不調を防ぎましょう。
酵素玄米の作り方
酵素玄米を作るには、炊飯器を使う方法と圧力鍋を使う方法の2種類があります。
ここでは酵素玄米の作り方を、おいしく作るポイントと共に紹介します。
炊飯器で作る場合
材料(作りやすい量)
- 玄米
- 3合(450g)
- 小豆
- 30g
- 塩
- 3g
- 水
- 適量
作り方
- 玄米と小豆を合わせて、3〜4回水を変えながら洗い、炊飯器に移す。
- 炊飯器の目盛りを見ながら、玄米の炊飯に必要な量の水と塩を加えてかき混ぜ、塩を溶かす。
- 6時間以上浸水させてから、炊飯器の玄米モードで炊く。
- 炊き上がったら一度軽く混ぜて、保温モードで3日間熟成させる。1日1回は、全体を返すようにしゃもじで混ぜる。
酵素玄米は保温1日目から食べられますが、まだ十分に熟成されていません。色が薄く、もちもちした食感も少ないはず。
3日ほど保温して熟成させると、酵素玄米ならではの食感や味わいが楽しめて、期待していた健康効果も得られるでしょう。
酵素玄米をおいしく作るポイントは、①の工程で、玄米の表面に傷が付くように力強く洗うことです。
泡立て器でかき混ぜるのもおすすめです。傷の部分から玄米に水が入り込み、やわらかく炊き上がります。
③の工程で時間をかけて浸水させて、玄米にしっかり水を吸わせることも大切です。
圧力鍋で作る場合
材料(作りやすい量)
- 玄米
- 3合(450g)
- 小豆
- 30g
- 塩
- 3g
- 水
- 810cc
- 玄米と小豆を合わせて、3〜4回水を変えながら洗い、ザルに上げて水気を切る。
- 圧力鍋に移し、水と塩を加えてかき混ぜて、塩を溶かす。
- 1時間ほど浸水させてから、火にかけて加圧する。圧力がかかったら、弱火にして15分ほど加圧する。
- 火を止めて、圧力が抜けるまで置いて蒸らす。ふたを開けて一度軽く混ぜ、保温ジャーに移して3日間熟成させる。1日1回は、全体を返すようにしゃもじで混ぜる。
圧力鍋を使うメリットは、浸水時間と炊飯時間を短縮できることです。
しかし圧力鍋では保温ができないため、保温ジャーを用意する必要があります。
あとは炊飯器で作る場合と同様、3日間ほど熟成させれば、おいしい酵素玄米ご飯ができあがります。
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酵素玄米はここに注意!保存方法と保存期間
酵素玄米は保温して3日ほど熟成させるため、作る際には少し注意が必要です。
酵素玄米を作るときに気をつけたいポイントをお伝えするので、心に留めて酵素玄米作りに取り組んでください。
取り扱いは衛生的に
炊飯器の保温温度は約60〜75℃であり、食中毒菌などの雑菌が繁殖しにくい温度帯に設定されています。
しかし酵素玄米を取り扱う際は、衛生面への注意が必要です。
手はきちんと洗い、清潔な調理器具を使いましょう。
1日1回かき混ぜるときに使うしゃもじも、きれいなものを用意してください。
雑菌の混入を防ぐために、炊飯器のふたはきちんと閉めましょう。
ふたを開けっぱなしにしていると、保温温度が下がって食中毒のリスクが高まるおそれもあります。
万が一、酵素玄米から異臭がしたり粘りが見られたりした場合は、雑菌が繁殖して腐敗している可能性があります。
様子がおかしいと思ったら、食べるのをやめましょう。
できあがったら冷凍保存
熟成させた酵素玄米は、そのまま炊飯器で保温し続けてもかまいません。
5日以上保温しても食べられますが、乾燥したり食感が悪くなったりする可能性があります。
酵素玄米をおいしく食べるなら、冷凍保存がおすすめです。
ラップの上に熟成できた酵素玄米を均一に広げて、ラップでぴっちりと包みます。
粗熱が取れてから、冷凍庫に入れましょう。冷凍すれば、1ヶ月ほど保存可能です。
食べるときは、電子レンジで解凍してください。
冷蔵保存はおすすめしない
ふっくらおいしく炊けた白米も、冷蔵庫で保存するとパサパサした食感になり、おいしく食べられなくなってしまいます。
これは、温度が下がることで米に含まれるでんぷんが変質し、固くなってしまうためです。
玄米は白米に比べて、冷蔵保存しても食感があまり変化しないといわれています。
しかし、せっかくならおいしい状態で食べたいものです。
酵素玄米は冷蔵ではなく、冷凍保存することをおすすめします。
酵素玄米を上手に取り入れよう!
酵素玄米とは玄米、小豆、塩を合わせて炊飯し、3日ほど熟成させて作る玄米ご飯です。
保温して熟成させることで味や食感が変化し、消化もよくなります。
さらに、ダイエットや健康への効果も期待できます。
酵素玄米を作るには少しの手間や衛生面への配慮が必要ですが、その味わいや健康効果のとりこになってしまう人は少なくありません。
この記事で紹介した作り方を参考にして、酵素玄米を試してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
シドニー大学「GI検索」
大塚製薬「血糖値とGIの関係性」
公益財団法人 日本豆類協会「豆の主な機能性成分」
かわしま屋「酵素玄米の作り方|炊飯器でもちもちに炊き上げるコツ【管理栄養士監修】」
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