日本の伝統的な飲み物である甘酒は、原材料の違いで2種類に分けられることをご存知でしょうか。米麹由来の甘酒は誰でも安心して飲めますが、酒粕から作られた甘酒はアルコールが含まれることがあるため、飲む人によっては注意が必要です。
この記事では、日々さまざまな食べ物に興味を持ちながら生活している管理栄養士が、甘酒に含まれるアルコールについて詳しく解説します。アルコールを含まない甘酒の見分け方もお伝えするので、妊娠中の方や子どもに甘酒を飲ませたい方は参考にしてください。
目次
甘酒の基礎知識
夏は栄養補給ができて、冬は体を温めてくれる甘酒。やさしい甘みや独特の香りに、心がほっと落ち着く飲み物でもあります。ここでは、甘酒の種類とそれぞれの特徴を解説します。
甘酒の種類と特徴
甘酒には、「米麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類があります。
米麹甘酒の「米麹」とは、米に麹菌というカビ菌を繁殖させたものを指します。米麹と炊いた米、水を混ぜ合わせて一定の温度で発酵させると、米麹甘酒の完成です。米麹甘酒を飲むと、麹の香りとやさしい甘みを感じます。栄養に関しては、米由来のブドウ糖やオリゴ糖のほか、発酵によって作られるビタミン類が含まれます。
酒粕甘酒の「酒粕」は、日本酒の製造過程でできる副産物です。日本酒は、米と米麹、酵母菌を合わせて発酵させて作ります。発酵後に日本酒を搾り取ると、酒粕が残ります。この酒粕と砂糖、水を混ぜ合わせたものが、酒粕甘酒です。酒粕甘酒には、ほのかなお酒の風味としっかりした甘みがあります。たんぱく質や食物繊維、ビタミンB群が含まれていることも特徴です。
アルコールを含む甘酒と含まない甘酒の違い
日本酒作りの副産物である酒粕を使用した酒粕甘酒は、微量ながらアルコールが含まれることがあります。酒粕甘酒を作るときに加熱しますが、アルコールを完全に飛ばすことはできません。そのため子どもや妊娠中の方、アルコールに弱い方は飲用を避けたほうがよいでしょう。
一方、米麹甘酒は名前に「酒」の文字が付きますが、アルコールは含まれません。子どもから年配の方まで、安心して飲めます。
市販の甘酒で、米麹と酒粕のどちらが使われているかを見分けるには、原材料を確認しましょう。米麹と酒粕の両方を原材料に使用している商品もあるため、「酒粕」の表示がないことを確認してください。
甘酒のアルコール含有量
酒粕には8%ほどのアルコールが含まれていますが、酒粕甘酒は製造過程で加熱して、アルコールを飛ばしています。酒税法ではアルコール度数が1%以上あると「酒類」になるため、市販の酒粕甘酒はアルコール度数が1%を下回るよう調整されているのです。
酒粕甘酒に含まれるアルコールは少量とはいっても、大量に飲用したり、アルコールに弱い方が飲んだりすると体に影響が現れる可能性があります。アルコールを避けたい場合は、アルコールをまったく含まない米麹甘酒を選びましょう。
甘酒のアルコールを飛ばす方法
家庭で酒粕から甘酒を作るときにアルコールを飛ばすには、アルコール(エタノール)の沸点である78℃以上で加熱してください。アルコールを飛ばした酒粕甘酒を作る方法は、次のとおりです。
鍋に湯を沸かし、酒粕を手でちぎって加えます。酒粕を崩しながら、5〜10分ほど煮込んでアルコールを飛ばします。最後に砂糖と少量の塩を加えると、酒粕甘酒の完成です。
しかしどれだけ加熱しても、完全にアルコールを飛ばすことはできません。家庭で作る酒粕甘酒は、どの程度アルコールが残っているかわからないため、車の運転前などに飲用するのはやめておきましょう。
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甘酒に関するQ&A
ここでは、アルコールが含まれる可能性がある甘酒の、気になる点について回答します。
妊娠中でも飲める?
妊婦のアルコール摂取は、胎児の健やかな成長に悪影響を及ぼすおそれがあります。そのため、アルコールが含まれる可能性がある酒粕甘酒の飲用は避けるべきです。また授乳中も、酒粕甘酒を飲むのは止めておきましょう。
米麹甘酒はアルコールが含まれないため、妊娠中や授乳中の方が飲んでも問題ありません。ただし甘みがあり、エネルギーも少なくはないため、体重管理が必要な妊婦は飲みすぎないように注意してください。
子どもでも飲める?
子どものアルコール摂取は、脳や内臓、精神面への悪影響が懸念されます。市販の酒粕甘酒は、アルコール度数が1%未満のため「酒類」には分類されません。しかしわずかでもアルコールが含まれる可能性があるので、子どもに与えるのは避けるべきです。
米麹甘酒であれば、子どもが飲んでもアルコールによる害はありません。米や米麹の粒を嫌がる場合は、ミキサーにかけてなめらかにするとよいでしょう。また牛乳と混ぜても飲みやすくなります。ただし飲みすぎるとエネルギーの過剰摂取になるため、与える量に気をつけてください。
甘酒を飲んでも自動車などの運転はできる?
呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上検出されると、酒気帯び運転と判定されます。これは、ビール中瓶1本を飲んだときの血中アルコール濃度に相当します。
アルコールが含まれる可能性があるのは、酒粕甘酒です。ビールほどアルコール度数が高くないとはいえ、飲んだ量や体質によっては体内のアルコール濃度が高くなるおそれがあります。酒粕甘酒を飲んだ直後に、自動車などを運転するのは控えましょう。
アルコールを含まない米麹甘酒であれば、飲んだ直後に運転しても差し支えありません。
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飲む人に適した甘酒を選ぼう
甘酒には、米麹から作るものと、酒粕を材料にするものの2種類があります。どちらも特有の香りや甘みがあり、栄養が豊富なおいしい飲み物ですが、酒粕由来の甘酒はアルコールを含む可能性があります。
アルコールは加熱することである程度飛ばせますが、完全な除去はできません。子どもや妊婦、授乳中の方、アルコールに弱い方、車の運転をする方の飲用は避けましょう。
誰でも安心して飲めるのは、アルコールが含まれない米麹甘酒です。甘酒の特性を理解し、飲む人やシチュエーションに合わせて甘酒を選んでください。