日本人の食生活に欠かせない味噌はその地域によって様々な種類があります。
味噌には保存食としての古い歴史があり、土地の気候や収穫される農作物の違いによって作り方や使用する材料が異なります。その土地の人々が工夫をしてきたことで、現代の種類に富んだ味噌文化を生み出しました。
この記事は約10年間、主人の転勤に付き添い東北から北陸地方まで引っ越しをしながら食にまつわる仕事を続けてきた管理栄養士、さえさんが執筆しています。
引っ越しとともに味噌が変わることで、思っていた味が再現できないという悩みを持っていました。それは私が味噌の特性を知らずに起こしてしまった失敗です。
この記事を読んだ方が味噌の特性を把握し、自分のイメージどおりの味を再現できる手助けができたら嬉しいなと思っています。
目次
【原材料別】味噌の種類
麹菌をつける材料 | 麹と合わせる材料 | 地域 | 味噌の色 | |
---|---|---|---|---|
米味噌 | 米麹 | 大豆 | 北海道~中国・四国地方 日本の約8割で食べられている | 赤味噌、淡色味噌、白味噌 |
麦味噌 | 麦麹 | 大豆 | 九州地方 | 白味噌 |
豆味噌 | 味噌玉(蒸した大豆を丸めたもの)に直接麹菌をつける | 愛知県、岐阜県、三重県 | 赤味噌(黒色に近い濃い色) | |
調合味噌 | 異なる2種類以上の味噌を合わせたもの、複数の麹を使用して醸造した味噌のことです。 |
日本の味噌は大きく3種類に分類することが出来ます。麹菌をつける材料によって、米みそ、麦味噌、豆味噌に分けられます。
麦味噌は大豆に対する麹菌を混ぜる割合が米味噌よりも多いのが特徴です。豆味噌が作られている地域では夏場に高温多湿になりやすく、米麹や麦麹を使用した作り方では酸敗しやすいため味噌玉に直接麹菌をつけるという特殊な方法での味噌づくりが発展してきました。
【地域別】味噌の種類

地域別に味噌の種類を紹介します。併せて郷土料理の紹介も行いますのでぜひ参考にしてみてくださいね!
![]() 北海道味噌 | 北前船の影響で越後味噌・佐渡味噌に近い米味噌です。 辛口の米みそで万人向けの味です。 | 鮭のチャンチャン焼き 鮭のチャンチャン焼き 北海道 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 津軽味噌(青森県) | 津軽三年味噌とも呼ばれ、熟成に長時間を要する米味噌です。 熟成に長い時間を要することから酸敗を防ぐために塩分濃度が高い傾向があります。 | しょうが味噌おでん しょうが味噌おでん 青森県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 秋田味噌 | 米麹の割合が高い贅沢な米味噌です。 柔らかな甘味とうま味が調和しています。 | きゃのっこ汁 きゃのっこ汁/けの汁 秋田県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 仙台味噌(宮城県) | 伊達政宗の時代から戦闘糧食として発展してきた米味噌です。 仙台城内に「御塩噌蔵」という味噌工場が建てられたのが仙台味噌の始まりです。 | しそ巻き しそ巻き 宮城県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 会津味噌(福島県) | 盆地の厳しい気候条件の中で育まれた赤色辛口の米麹味噌です。 | みそかんぷら みそかんぷら 福島県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 江戸甘味噌(東京都) | 光沢のある茶褐色が特徴の米味噌です。 塩加減、甘さ加減が京都白味噌と同じくらいです。 普通の辛味噌に比べて麹の量は2倍、塩は半分程度で作られています。 熟成期間は短めです。 | 治助芋のネギ味噌 治助芋のネギ味噌 東京都 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 越後味噌・佐渡味噌(新潟) | 越後味噌は上越タイプ、中越・下越タイプ、佐渡タイプと大まかに3タイプに分類されています。 上越タイプは米麹が残っている物が多く、味噌汁にすると袋状になった麹が浮きます。 中越・下越タイプでは冴えた赤色で発酵・醸成による華やかな香りがします。 佐渡タイプでは独特な味わいと香りが特徴です。 | けんさん焼き けんさん焼き 新潟県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 信州味噌(長野県) | 淡色で辛口の米味噌です。 全国で消費されている味噌の5割が信州味噌です。 信州味噌の起源は古く鎌倉時代まで遡ります。 | 五平餅 五平餅 長野県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 加賀味噌(石川県) | 加賀藩の藩政時代から戦時の貯蔵食品として作られ始められた米味噌です。 米麹を多く使用した長期熟成型の味噌です。 | めった汁 めった汁 石川県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 東海豆味噌(愛知、三重、岐阜) | 三州味噌、八丁味噌、名古屋味噌など東海地方で作られている豆味噌の総称です。 夏の暑さが厳しい東海地方では、高温多湿に強く長期保存ができる豆味噌が発達しました。 | 煮味噌 煮味噌 愛知県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 関西白味噌 | 関東では西京味噌とも呼ばれている米味噌です。 米麹の比率が高く、塩分5~6%の短期熟成型の甘味噌で白色をしています。 | 白味噌の雑煮 白味噌の雑煮 京都府 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 府中味噌(広島) | 麹の割合が高く、塩分が少ないことが特徴の米味噌です。 白味噌が代表的です。 | かきの土手汁 かきの土手鍋 広島県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 讃岐味噌(香川) | 讃岐地方で作られている味噌の総称を讃岐味噌と言います。 製造の過程で白く仕上げるために大豆の茹で汁を3~4回ほど新しい湯と交換して茹でて製造します。 | あんもち雑煮 あんもち雑煮 香川県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 御膳味噌(徳島) | 徳島県で作られている米味噌です。 甘口味噌で、蜂須賀公の御膳に供されていたことから御膳味噌と名前がつけられました。 | 祖谷のでこまわし 祖谷のでこまわし 徳島県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 瀬戸内麦味噌(愛媛、山口、広島) | 大麦、はだか麦、大豆を原料に作られる麦味噌です。 瀬戸内麦味噌はまろやかな味わいが特徴です。 | 味噌汁(麦味噌) 味噌汁(麦味噌) 愛媛県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
![]() 九州麦味噌 | 九州地方全域で田舎味噌と呼ばれ食べられている麦味噌です。 九州の麦味噌は地域ごとに味が異なり、バラエティに富んでいます。 | 豆腐の味噌漬け 豆腐の味噌漬け 熊本県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp) |
画像引用:各地のみそ | みそ健康づくり委員会/ 味噌の公式サイト (miso.or.jp)
味噌づくりはその土地の歴史や気候条件とともに発展してきました。
冷涼な気候で発酵に時間がかかる北海道・東北地方では酸敗を防ぐために塩分濃度が高く熟成期間が長い味噌づくりが主流です。
高温多湿な気候条件の中で発達した東海地方の豆味噌や米の収穫量が少ないことから発達した麦味噌など、味噌の種類はその土地の特徴を強く表しています。
今昔、豆の加工品。:農林水産省 (maff.go.jp)
各地のみそ | みそ健康づくり委員会/ 味噌の公式サイト (miso.or.jp)
味噌の種類によって栄養価は違う?
100gあたり | エネルギー | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 |
---|---|---|---|---|
米味噌・淡色辛味噌 | 182kcal | 12.6g | 6.0g | 21.9g |
麦味噌 | 184kcal | 9.7g | 4.3g | 30.0g |
豆味噌 | 207kcal | 17.2g | 10.5g | 14.5g |
味噌の種類による栄養の違いは味噌に使われている原材料の違いによります。米味噌にも麹の歩合が多いものや塩を多く使っているものなど地域や醸造所によって味噌の栄養は異なってきます。
米味噌
米味噌は広い地域で食べられており、種類が豊富な味噌です。味噌の色によって白味噌・淡色味噌・赤味噌に分類されます。
一般的に白味噌は熟成期間が短く、塩分は少なめ、米麹の割合が多い傾向があります。色が濃くなるに従い塩分濃度と熟成期間が長くなる傾向があります。塩分が多いほど長期保存が可能です。
麦味噌
麦味噌は麦麹を使用して作られています。そのため、米味噌や豆味噌と比較して食物繊維が多いことが特徴です。米味噌や豆味噌と比較して使われる塩も少ないものが多い傾向があります。
食物繊維が多く食塩が少ないという特徴から、健康や美容を意識している人におすすめの味噌です。
豆味噌
豆味噌は豆麹を発酵させ味噌にします。豆麹を使用するため、米味噌や麦味噌よりも大豆の使用量が多くなります。また、他の味噌は煮込みすぎると風味を損なってしまいますが、豆味噌は煮込むほど風味が増します。
大豆の使用量が多いため、大豆イソフラボンやタンパク質が他の味噌と比較して多いです。
市販で購入できるさえさんおすすめ味噌4選
各地域で暮らしていく中で見つけたおすすめの味噌を紹介します!
山本味噌醸造場 ゆきんこ味噌
麹の袋が残っているのが個性的な味噌です。味噌汁にした時に雪のようにお椀の中に舞う麹の袋がお気に入りです。まろやかな甘さのある味噌です。
山本味噌醸造場 – 新潟上越/手造り醸造の越後味噌・みそ漬 - 〔商品のご紹介〕 (yukinkomiso.jp)
仙台味噌醤油株式会社 名工500g
仙台味噌のキリッとした旨味が特徴です。すべて国産の材料を使用して作られたプレミアムな味噌です。
名工 500g|仙台味噌醤油株式会社 (sendaimiso.co.jp)
信州味噌株式会社 山吹味噌
淡色、長期熟成タイプの信州味噌です。あっさりとした味わいの信州味噌が多い中、山吹味噌は濃い旨味とコク、芳醇な香りが強いです。
山吹味噌 | 350年の歴史ある信州味噌の公式サイト (yamabukimiso.com)
ハナマルキ お父さん
手に取りやすい価格と安定した美味しさで定評のあるハナマルキさんのお父さん味噌です。柔らかく、サッと溶けやすいさらりとした味噌で、どんな料理にも活用しやすいです。
お父さん 750g | 商品情報 | おみそならハナマルキ (hanamaruki.co.jp)
作りたい料理にぴったりな味噌の選び方
味噌の「色」で選ぶ
素材の色を活かすお料理をイメージしているなら淡色~白味噌がおすすめです。
色の濃い味噌に比べて塩分濃度も低いものが多いため、素材の色と味を活かしながら味噌の風味をつけることが可能です。
グラタンやクリーム系のパスタソースの隠し味に使う場合はお料理のイメージの色をそのままで仕上げることのできる白味噌がおすすめです。
豆腐や淡色野菜などの白っぽい色の素材には赤味噌の濃い色がアクセントとなって食卓を彩ってくれます。
味噌の「地域」で選ぶ
味噌を使った料理は全国各地でさまざまなものがあります。郷土料理を作る際はその土地の味噌を使用することでイメージ通りの味を再現することができます。
味噌の「塩分」で選ぶ
家族や自身が濃い味付けが好みの場合は塩分濃度が高めの長期熟成タイプの赤味噌を使用してみましょう。肉や魚の味噌漬けを作る際に塩分濃度が高めのものは短時間で味付けができます。
逆に塩分を控えた食生活を実現するには、減塩タイプの味噌や白味噌がおすすめです。
塩分が多いと言われている赤味噌ですが、健康食ブームによって多くのメーカーが減塩タイプの味噌を製造・販売しています。赤味噌に慣れ親しんだ人でも減塩タイプの味噌を選ぶことで、塩分を控えた食生活を実現することができます。
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色々な味噌を試してみましょう
味噌は地域や原材料で多くの種類が存在していることがわかりました。
料理によって使い分けることでレパートリーの幅が広がり、食生活を豊かにすることができます。
これを機会に各地の郷土料理やまだ食べたことのない味噌に挑戦してみてくださいね。
料理好きな方への旅先のお土産にも、味噌は常温で持ち運びが可能なのでおすすめですよ。