鰹節といえば、出汁を引いたり、薬味としても使われる食べものですが、実は世界一硬い食べものとしての顔も持っています。まるで木材にカンナをかけるように、削り器で鰹節を削る様子からは、もともとのみずみずしい魚の姿は想像がつかないほどです。
和食のベースとなる出汁の材料であり、日本人の食卓からは切っても切り離せない歴史のある鰹節には、ダイエットを始めとする、健康に対する効果もあります。今回は身近でありながら意外と詳しく知らない鰹節を解説していきたいと思います。
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鰹節は発酵させることで、カチカチに硬くなる
鰹節は、鰹を茹でた後に焙乾(ばいかん)して、つまり燻製にして出来上がるのですが、実は現在出回っている鰹節には2種類あります。ひとつはこの焙乾(ばいかん)をもって完成とする「荒節(あらぶし)」と呼ばれるもので、もうひとつがこの後さらにカビをつけて発酵させて完成する「枯節(かれぶし)」です。
よく、「鰹節は発酵食品だ」と言われますが、厳密には、荒節は発酵食品ではなく、カビ付けを行った枯節のみが発酵食品です。冒頭に書いた「世界一硬い食べもの」とは、枯節のことで、カビが鰹の身に残った水分を残らず奪ってしまうため、まるでダイヤモンドのようにカチカチになるのです。
ちなみに、世の中に出ている鰹節のほとんど、9割以上が荒節だと言われています。どっちが良いというものではありませんが、枯節は複雑な香りが特徴なので、こちらもぜひ試してみてほしいです。
天然の出汁だけが持つ良さ
鰹節には「イノシン酸」と呼ばれる成分が含まれており、これがうま味のもととなります。ちなみに、昆布には「グルタミン酸」という別のうま味成分が含まれていて、この昆布から「うま味」という味を発見したのは日本人で、外国でも「Umami」という言葉が使われています。
和食は西洋料理や中華料理のように、肉や乳製品のうま味を使わずに発展してきました。その制約の中で日本人が出会ったのが鰹節や昆布などのうま味です。
これが日本人の独特の、繊細な味わいがわかる味覚を養います。外国人に昆布出汁を飲ませると、「海藻臭くて美味しくない」という感想が出ると言いますから、やはりこの美味しさがわかるのは日本人独特です。
そういった意味では、子どもの頃からこのうま味を覚えさせて、日本食の美味しさがわかるように味覚を教育することは大切なことです。
天然出汁の芳醇な香りがダイエットにつながる
鰹節に含まれるイノシン酸には、食事に満足感を与え、食べすぎを防ぐ効果が報告されています。これは、昆布に含まれるグルタミン酸でも同様で、つまりはしっかりと出汁を効かせた食事をとることでダイエットにつながるということです。
また、味には「相互作用」というものがあり、たとえば出汁のうま味と塩味には互いを強化する関係があります。出汁を使うことで、少量の塩分でも美味しさを感じられるので、減塩にもなります。
コンビニ食品に代表される化学調味料のうま味に慣れてしまうと、濃い味を求めるようになったり、食材が持つ本来の美味しさがわからなくなっていきます。ふだんからなるべく本物の出汁を使った食事を心がけたいものです。
ズボラでも大丈夫! ふだん使いの出汁の引き方
いくら天然の出汁が良いとわかっていても、手間がかかるとなかなか日常的に使うのは難しいですよね。通常であれば、沸かしたお湯の中に鰹節を入れて2〜3分置き、鰹節を濾(こ)して出来上がりですが、この濾すのが結構面倒です。
そこで、僕はこの濾すのを省きます。つまり、鰹節もろとも料理に使うのです。おもてなし料理でなければまったく問題ありません。ちなみに、煮干しで出汁を引く時も、同様に煮干しごと食べています。滋養もあって一石二鳥です。
それさえも面倒だという人には出汁パックがオススメです。昆布や鰹節を使うより割高になりますし、香りも少し落ちますが、化学的に合成された顆粒だしよりははるかに良質です。
管理栄養士圓尾がオススメする鰹節
この記事を読んで「ようし、早速スーパーに行って鰹節を買ってこよう」と思われた方、ちょっと待ってください。残念ながらスーパーに並んでいる大量生産の鰹節はハッキリ言って美味しくありません。
これはなぜかというと、大量生産の鰹節は、日本から距離がある「遠洋で」「巻き網漁」という方法で捕獲されて作られるからです。遠くで獲れた鰹を日本に持って帰ってくるために、すぐに冷凍され、さらに巻き網という鰹が苦しむ捕獲方法をとることで、うま味が少なく、酸味のある鰹節になってしまうのです。
そこでぜひ一度お試しいただきたいのが、東京は晴海にある鰹節問屋「タイコウ」の鰹節です。僕はここの稲葉社長と直接知り合いなのですが、この方が目利きで、近海で獲れた一本釣りの鰹節にこだわって美味しい鰹節だけを全国に卸しています。
販売しているお店が限られていますが、会社のホームページ(http://www.taikoban.info/renew/)には取扱店が掲載されているので、ぜひ調べてお試しください。出汁用にも、薬味としても香りがまったく違いますよ。