匂いの強い食べ物といえば「くさや」を連想する人は多いでしょう。
日本で昔から食べられているくさやですが、非常に匂いが強烈なことで有名です。
しかし、江戸時代には幕府にも献上されていた由緒ある食べ物です。
また、強烈な匂いにもかかわらずその味に魅了される人が多いのもまた事実。
今回は、くさや初心者が上手に選ぶポイントから、美味しく食べる方法、アレンジレシピを徹底解説していきます。
くさやってどんな食べ物?
匂いが強い食べ物として知られるくさやですが、なかなか身近にある食べ物ではありません。
ただ、どうしてそんな匂いの強いものを食べるようになったのか疑問ではないでしょうか。
まずは、くさやの誕生の歴史と製造方法を説明します。
くさやの歴史と文化的背景
くさや発祥の正確な記録はなく、伊豆大島・八丈島・新島説が有力と言われています。
江戸時代に、幕府に伊豆大島から献上されていた一回干しのくさやが有名です。
くさやの名前は、魚河岸で匂ったことから、くさやと呼ばれるようになったという説があります。
また、新島では魚をヨと呼ぶことから「くさよ」と呼ばれ転じて「くさや」になった
など諸説あります。
くさやの製造工程
次に、くさやを製造する工程を説明します。
くさやは、脂が少ない魚の方が向いています。
そのため主にムロアジ類やトビウオ類・シイラなどの魚が使われることが多いです。
【くさやの製造工程】
- まず内臓を取った魚をくさや液に10〜20時間浸します。
- 水洗いして乾燥用の網などに並べます。
- 48〜60時間かけて通風乾燥、または天日干しで乾燥させると、くさやができます。
継ぎ足しで使われるくさや液は、茶褐色で粘り気のある液体です。
何度も魚を漬け込むことで発酵が起こり独特の風味と匂いがつきます。
くさや液は古いものほど良いとされ、200〜300年前から浸け継がれたものも存在します。
くさやの上手な選び方
ここからは、くさやの上手な選び方を説明していきます。
くさやは、匂いが強烈ですので初心者が初めから本格的なものに挑戦することは難しいかもしれません。
そこで、自分にあったくさやを選ぶためのポイントを幾つかご紹介しますので参考にしてください。
質の高いくさやを見分ける方法
質の高いくさやを見分けるポイントとして以下の4つがあります。
- 色や硬さ:全体的に茶褐色で均一の色と硬さになっているか。
- 匂い:かなり強い匂いですがあまりに不快に感じたり腐敗臭が強いものは避ける。
- 保存状態:しっかりと密閉された包装になっているか。
賞味期限が表示されており余裕があるか。 - 生産地:安心できる生産地や信頼できる販売者からの購入先か。
伊豆大島や新島など特定の生産地の評価は高い。
食べ方によって選ぶ方法
くさやは多様なタイプで販売されています。
自分の好みによって加工の仕方や形状を選ぶことができます。
まずは、加工形態を確認してみましょう。
くさやを本格的に体験してみたい人や楽しみたい方は、生のくさやを購入して自分で調理してみると良いでしょう。
くさや本来の味や匂いを感じることができます。
ただし、調理知識があった方が良いですし強烈な匂いは覚悟しておいてください。
次に、調理や匂いに耐える自信がない方は焼き上げタイプや素焼きタイプがおすすめです。
生のくさやに比べると食べやすく加工してくれてあることが多いです。
また、味付けタイプや練り物などの加工食品としてくさやを取り入れても良いかもしれません。
形状も姿のままから、解(ほぐ)されたくさやもあります。
その他には、縦に半身をカットし加熱されたスティックタイプもおすすめ。
バナナのようにパッケージを剥いて食べることができるので、手を汚さずくさやを楽しむことができます。
くさやを本来の味を楽しみたい | 生のくさやを購入して自分で調理 |
調理、匂いに自信がない・初心者 | 焼き上げタイプ 素焼き 味付け 加工品 |
形状 | 姿のまま ほぐし スティック(棒状) |
くさやを美味しく食べてみよう
それでは、いよいよくさやの食べ方を説明します。
基本的な調理方法から、アレンジレシピまでご紹介します。
上手に調理することで、くさやの美味しさを最大限引き出して食べることができるでしょう。
基本的な食べ方
くさやの調理は、基本的には焼きが一般的。
焼き方は皮側7割・身3割で焼くと美味しさを引き出せます。
火の通し方は、完全に焼き上げるよりも半生程度が美味しく仕上がるでしょう。
火加減は、中火で焦がさないように焼くことがポイント。
また、焼く前に醤油や焼酎に漬けておくと匂いを軽減できます。
さらに、網焼きによる直火よりもグリルやオーブンでの加熱の方がおすすめです。
理由は、水分蒸発が少ないことでふっくら仕上がり、匂いの広がりを抑える効果があるからです。
このように、匂いの強いくさやも調理の仕方で美味しさを引き出すことができます。
くさやの簡単アレンジレシピ
くさやを上手に焼くことができるようになったら次はアレンジ料理にも挑戦してみましょう。
余っているくさやの使い方として参考にしてください。
くさやブルーチーズ
くさやは発酵食品。
実は、くさやと同じ発酵食品で匂いの強いブルーチーズは相性が良いです。
そこで、おつまみや前菜としてチーズと合わせることで、くさやもさらに美味しく食べることができるでしょう。
調理時間の目安:約5分
材料(2人分)
- くさや(ほぐし)
- 30g
- ゴルゴンゾーラチーズ
- 30g
- ケッパー
- 10粒程度
- オリーブオイル
- 30g
作り方
- ゴルゴンゾーラを1cm程度の角切りにします。
- ゴルゴンゾーラ・くさや・ケッパーをオリーブオイルの中に入れ混ぜます。
- 器に盛り付けて完成。
くさや茶漬け
くさやの簡単な活用方法として、お茶漬けは作りやすいアレンジ料理でしょう。
ほぐしたくさやを、お茶やだし汁を注ぐだけなので簡単にできます。
また、水分を多くすることでくさやの匂いも軽減できるメリットがあります。
調理時間の目安:約2分
材料(1人分)
- くさや(ほぐし)
- 20g
- ご飯
- 1膳(120gくらい)
- 出汁またはお茶
- 120〜180g
- 刻み海苔
- ひと摘み
- 長ネギ
- ひと摘み
- 生姜
- 少々
作り方
- ご飯を器に盛り付ける。
- 残りの具材をご飯の上にのせる。
- ゆっくりと出汁またはお茶をゆっくりと注ぎかけ完成。
好みで薬味を変えたり追加するとより美味しく召し上がることができるでしょう。
くさやのトマトソースパスタ
くさやをおしゃれにアレンジしてみました。
ご紹介するのはトマトパスタ。
くさやは、魚の発酵食品です。
似た食材としてアンチョビがあります。
くさやは、アンチョビほど塩分は強くありませんが似た味わいがあります。
そこでアンチョビの代わりに、くさやを活用してトマトパスタを作ってみましょう。
調理時間の目安:約30分
材料(4人分)
- くさや(ほぐし)
- 40g
- トマトホール缶
- 1缶
- 乾燥パスタ
- 400〜500g
- にんにく(微塵切り)
- 1片
- 唐辛子
- 1〜2本
- ケッパー
- 20粒程度
- オリーブ
- 10粒程度
- ローズマリー
- 1本
- コンソメ
- 15g
- オリーブオイル(調理用)
- 100g
- オリーブオイル(仕上げ用)
- 50g
作り方
- にんにく・唐辛子・オリーブオイルをフライパンに入れ弱火にかけます。
- にんにくに色がついてきたらトマト缶とコンソメを入れます。
- 沸騰してきたらケッパー・ローズマリーを入れ、さらに煮詰めます。
- とろみが出てきたら、くさやを入れます。
- パスタを茹で、④のソースと絡めます。
- ローズマリーを取り出し器に盛り付けます。
- 取り出したローズマリーを飾りにしてオリーブオイルをかけて完成。
くさやを入れた後、あまり煮込まない方が匂いが広がりにくく、食べやすいでしょう。
くさやの匂い対策
匂いが強烈なくさやですので、管理の仕方にも注意が必要です。
匂いの管理がしっかりできないと思わぬトラブルにも発展しかねません。
また、くさやが不快な匂いがする原因やその対処方法もお伝えするので活用してください。
なぜくさやは独特の匂いがするのか
くさやの匂いが嫌がられる理由は、不快臭と呼ばれる人が嫌がる匂い成分が多いからです。
主な匂い成分は、酪酸・トリメチルアミン・アンモニアです。
酪酸は、死臭や銀杏に似た匂いを感じさせます。
トリメチルアミンは魚臭、アンモニアは刺激臭。
このように、くさやの匂い成分は人に不快感を感じさせるものが多く含まれています。
家庭での匂いの管理
くさやを購入したら、匂いの管理が心配という人も少なくありません。
くさやの匂いの管理は、かなり厳重に行う必要があります。
家での管理方法としては、くさやをラップでしっかりと包みます。
さらに、ジップロックや密閉容器で保管すると匂いもかなり抑えることができるので参考にしてください。
保存期間は、生のくさやの場合は1週間程度なら冷蔵保存。
それ以上であるなら冷凍庫での保存が可能です。
しかし、匂いが出るので早めに食べてしまうことをお勧めします。
匂いを抑える工夫
くさやの匂いは承知の上だとしても、やはり初心者にはハードルが高いかもしれません。
そこで、くさやの匂いを少しでも抑える工夫も必要でしょう。
おすすめの方法は、加工済みのくさやを購入することです。
生のくさやは、調理中に強い匂いが出ますので調理済みの製品であれば匂いを抑えることができます。
調理済みのくさやは次のようなものがあります。
- 缶詰
- 真空パック
- 加工調理(練製品など)
- 加熱済み干物
購入するときにこのような商品を選ぶことで匂いが少ないくさやを楽しむことができるでしょう。
くさやの健康効果
くさやは栄養面からみると、とても優れた食品です。
魚を浸すくさや液は、長年継ぎ足し作られてきた過程で発酵が起こります。
発酵効果によって栄養価が上がることは見逃せません。
ただし、くさやは味が良いのでつい食べ過ぎてしまうという方もいるようです。
そこで、くさやの栄養面での利点と注意点を説明します。
栄養価と健康面での利点
くさやの健康面のメリットは、他の干物に比べると塩分が少ない点です。
くさやの塩分濃度は6〜8%で、18〜20%の塩分濃度の一般的なアジの開きと比較すると、およそ半分から3分の1です。
また、食品成分データベースでくさやと他の干物(アジの干物)を比べてみると栄養素の面でも多くなっていることがわかりました。
- カリウム 5倍
- カルシウム 2.4倍
- ビタミンB群 2倍程度
このような効果の他に、くさやが発酵食品であることも見逃せません。
発酵食品は、腸内環境を整える働きがあると言われています。
肥満や糖尿病だけでなく日頃の生活リズムも腸内環境に関係しています。
くさやを食べることで腸内環境が整い体の調子が整うことが期待できるかもしれません。
参照:保健指導リソースガイド
食べ過ぎのリスクと注意点
くさやの美味しさに魅了され、たくさん食べすぎてしまう人もいるかもしれません。
しかし、発酵食品で栄養もあるくさやも食べすぎると体の害になることがあります。
その一つに、塩分過多になる可能性があります。
塩分の摂り過ぎは、高血圧やそれに関連する病気にも繋がるリスクを高めてしまいます。
その他にも、くさやを食べすぎることで腸内環境のバランスが崩れることが考えられるでしょう。
体の調整機能も乱れてしまう可能性が出てきます。
いくら体に良いものでも摂り過ぎには注意してください。
また、くさやの強い匂いが体臭として出てしまうこともあります。
「大腸劣化」対策委員会によると食べものと体臭の関係性を説明しています。
特にくさやの匂い成分であるアンモニアは体臭の元になるので食べる量には注意が必要でしょう。
その他の注意点として、くさやを調理することでかなり強烈な匂いが出ます。
匂いは服や室内にも付く可能性があります。
そのため十分換気をする必要があるでしょう。
しかし、くさやの匂いを外に漏らすことで今度は近隣の方の迷惑になる可能性があります。
実は、私の賃貸住宅でも似た事件が起きたことがありました。
くさやを焼いていた方が警察に注意されていた状況を目撃したことがあります。
その後、私の所にも管理会社から匂いの強い食品は控えるような内容の文章が届きました。
住宅密集地や匂いをつけたくない人は、加熱済みタイプを選ぶと良いかもしれません。
くさや初心者でも美味しく食べてみよう
今回は、くさやをご紹介しました。
匂いが強いため初心者の人は躊躇してしまう食品だったかもしれません。
しかし、くさやはそれ以上に味が良いとファンの多い食品でもあります。
また、発酵したくさや液につけられたことで栄養価も上がり塩分も低く作られています。
伝統的な製法で作られているくさや液は、200年以上前から継ぎ足し使われてきました。
江戸時代には、幕府にも献上されていた由緒あるくさや。
ぜひ、情緒も味わいながら美味しく食べていただければ嬉しく思います。