子どものころは苦手だったけれど、大人になって好きになった食べ物といえば、誰にでもいくつかはあると思う。私はというと、ピーマン、アボカド、とろろ昆、そして牡蠣!
牡蠣は「海のミルク」などと呼ばれるが、大学生になっても「どこがミルクなんだ?」と首をかしげていた。
牡蠣の美味しさに目覚めたのは、20代半ば。会社の先輩に連れて行ってもらった韓国料理店でのことだ。美味しいから、と勧められたのが生牡蠣だった。殻にのった生の牡蠣に赤くて辛そうなタレを付け、おそるおそる口にした瞬間、衝撃が走った。臭いと思っていたあの牡蠣が、プリッとミルキー、磯の香り漂うステキな美味しさに変身していたのだ(牡蠣が変身したわけではなく、私の味覚が変わっただけなんですが……。苦手な人も機会があればチャレンジしてみてください。牡蠣スイッチが入るかも!)。
それ以来、生牡蠣大好き! 牡蠣LOVE! となった私は、居酒屋で生牡蠣を見つければ飛びつき、家では牡蠣の土手鍋、牡蠣ご飯、蒸し牡蠣、牡蠣チヂミなどを楽しむようになった。

春の牡蠣は絶品! 大ぶりのものもいいけれど小粒でふっくらタイプが食べやすくて好き。殻付きの牡蠣は、磯の香りがたまりません!
特に、牡蠣が美味しいなーと思うのが春。夏に産卵した後、翌年の夏に向けて栄養を蓄え、ふっくらと身が太って美味しくなるのが春先なのだ。嬉しいことに、揺らぎやすい春の女性のココロとカラダにぴったりの栄養素もたっぷり!
ひとつは亜鉛。亜鉛には、肌の新陳代謝を活性化させ、肌再生を促す働きがあるので、春先の肌荒れや乾燥対策にも有効。さらに、亜鉛は、女性ホルモンの生成にも大きく関与しており、不足すると生理不順や不妊の原因にもなると言われている。他にも貧血や記憶障害、情緒不安定などの原因になることもあるので、春先の疲れやイライラ対策に役立つこと間違いなしだ。
亜鉛は豚レバーや牛肉にも多く含まれているが、牡蠣はその2~3倍もの量が含まれている。大きめの牡蠣3~4個で、1日の推奨量を摂取できるという優れもの! まさに、天然の美肌サプリ! 肌荒れ、貧血気味、生理不順に悩む人は、牡蠣の缶詰をストックしておいて、活用するのもおすすめだ。

最近の缶詰はレベルが高くてビックリ! 牡蠣らしい旨味が凝縮していて、おつまみにもいいですね
そんな女性の味方とも言える亜鉛だが、吸収率が低いのが欠点。たくさん摂ったつもりが、利用されずに排出されてしまっているということも珍しくない。
そんな亜鉛の助っ人となるのが、ビタミンCやクエン酸。つまり、定番の牡蠣にレモンの組み合わせは、美味しさだけでなく、栄養の面でもとても理にかなっているのだ。生牡蠣、蒸し牡蠣、カキフライにもぜひレモンを搾ってどうぞ!

蒸し牡蠣最強! 殻付きの牡蠣をタワシでよく洗って、スキレットや鍋に入れ、酒をふって蓋をして蒸すだけでOK

蒸し牡蠣は塩、オリーブオイル、レモンで食べるのが一番好き。牡蠣らしい磯の香りも堪能できます!
春先は肌の乾燥だけでなく、気温が上がって肌が脂っぽくなりがち……という人も、牡蠣は要チェック! 皮脂バランスを整えるのに欠かせないビタミンB群が豊富に含まれ、特に造血に欠かせないビタミンB12や葉酸が多いので、貧血気味、疲れやすい、血色が悪い、冷えやすいという人にもぴったりだ。
栄養ドリンクの成分として知られるタウリンも、牡蠣にはたっぷり含まれており、その量は牡蠣2~3個で1000mg! タウリンは疲労回復はもちろん筋肉の合成を高める働きが期待できるので、アスリートの食事にもよく用いられるそうだ。たくさん食べても汗や尿で排出されるので過剰摂取の心配はなく、1日10個程度食べても大丈夫と言われているので、ご安心を。ただし、タウリンは水溶性なので、煮汁ごといただくスープや煮物、炊き込みご飯が効果的だ。

牡蠣ごはんには海苔を合わせるのがおすすめ。磯の香りがよく合います。海苔にはビタミンCも含まれるので、たっぷり加えていただきましょう!
牡蠣の生食用と加熱用の違いは、下記のとおり。
●生食用=沿岸から離れた指定海域で漁獲され、浄化殺菌のため2 ~ 3日断食させてから出荷。
●加熱用=沿岸海域で漁獲され、洗浄してすぐに出荷
そう! 加熱用のほうが採れたての状態で、旨味や栄養もしっかり蓄えられた状態で店頭に並んでいるのだ。「生食用のほうが新鮮で美味しそう」と思われがちだけれど、しっかり火を通して食べるなら、加熱用を使ったほうが断然美味! というわけ。牡蠣料理を楽しむ際のご参考に。
ちなみに、今回の料理で使ったのは、岩手県大槌町(ひょっこりひょうたん島の!)の殻付き生牡蠣。『大槌食べる通信』(2017年4月号)で取り寄せ可能なので、興味のある方はぜひ、チェックしてみてください。