私はカラダのケアと更年期の知識を伝えるお教室や講演会を開催しているのですが、参加された方からこのような声を聞くことがあります。「夫がなにもやる気が出ない……というのでうつ病を心配していたのですが、病院で男性更年期と診断されたんです!」先日は、出張講演先の男性職員さんが「60を過ぎてからホットフラッシュがひどい。」と話していました。
実は男性にも更年期はあります。
今回は、ぜひ女性の皆さんにも知っていただきたい「男性の健康・更年期」についてのお話です。
女性が知っておきたい男性の「更年期」
女性の更年期は「閉経の前後10年」というように、ある程度時期がわかります。しかし、男性更年期は時期が一定ではありません。若くても更年期症状に悩むこともありますし、加齢に伴う症状というのもあります。
これは、男女のホルモン変化のグラフです。横軸が私たちの年齢。縦軸が性ホルモンの加齢による変化です。ブルーで書いてあるのが男性の中の男性ホルモン(テストステロン)です。
10代前半からグググと分泌量が高くなり、20代から高い状態が続いて女性と比べると性ホルモンはゆるやかに低下してゆくのが男性の特徴です。個人差はありますが、70歳になっても20代の半分くらいの男性ホルモンがある方もいます。だから男性は70歳になっても子どもが作れるのです。
時期について
一般的には、男性更年期は女性の更年期のプラス10歳「おおよそ55歳から65歳」の時期とされています。しかし、ストレスによって男性ホルモンの分泌が減った場合、30代・40代でも更年期症状を感じることがあります。
男性更年期障害の症状は、女性の場合と基本的には変わりません。メカニズムは同じように男性ホルモンの低下により、脳がパニックを起こし自律神経が乱れてさまざまな症状が出ます。
特徴的なのは、男性の場合うつ症状が強く出やすいことがあります。うつ症状については、日本の自殺者数年間3万数千人に及びますが、男性更年期にある男性が5分の1を占めているという現実もあります。
男性は悩みを打ち明ける場や不安の行き場がなかったり、子どものころから「男の子なんだから弱音をはかないの!」という家庭や社会の中で育ってきたこともあり、つらいと思っても相談できずに我慢してやり過ごしている方が大半。健康について本人も周囲も理解することで、多くの方が「生きやすく」なるのではないでしょうか。
男性更年期の症状の傾向
30代から50代など若い時期は、過剰なストレスに反応して男性ホルモンが低下し、抑うつ症状が出てきやすいと言う傾向があります。
60歳を過ぎると急に汗をかくホットフラッシュや、夜布団に入ってもなかなか寝付けないなどの、自律神経の乱れの症状が前面に出てくる傾向があります。
男性ホルモンも女性ホルモンと同じく、心とカラダ、そして命を守ってくれている「健康の守り神」です。男性らしい体をつくってくれたり、精子を作ることや性機能の役割、発毛や筋肉・骨・血を造ったり、記憶や認知などの脳の機能を保ったり気持ちを安定させる役割を担っています。
運動で男性ホルモンはアップする。
運動すると男性ホルモンがアップするという研究結果もあります。軽く走ったり、ウォーキングをしたり自転車をこいだり適度な有酸素運を行うことで、直後の男性ホルモンの上昇が確認されています。また睡眠不足は男性ホルモン低下をさせる大敵でもあります。女性の場合も適度な運動によって更年期症状がよくなる研究結果が出ています。パートナーがいる方は、ぜひ一緒にウォーキングなどカラダを動かして基本的な生活習慣を見直してみてください。
男性更年期だと思っていたら実は大きな病気が隠れていたという場合も。辛い場合は治療法もあります。メンズクリニックや泌尿器科での検診も健康を守る上での大切な選択肢です。
どれくらいの症状から病院に行けばいいのかの判断の目安になる「AMSスコアのチェックシート」もありますので、よければ試してみてください。
夫の性格が変わってしまった、ここのところ怒りっぽい、元気がない。もしかすると男性更年期かもしれません。更年期をチャンスにする。相手のことを理解すると、不思議と「思いやり」がわいてくるものです。