発酵食品愛好家からすると、「自分のぬか床を持っている」というのはちょっとした憧れの対象ではないでしょうか。でも、「ぬか床って管理するのが難しそう」「おいしくできるのかな……」というイメージを持っている方も多いのではないかと思います。
しかし、ぬか床を作るのは簡単ですし、管理も習慣づけと工夫しだいで誰でもできてしまいます。今回は「初めてのぬか床づくり」ということで、ぬか床の作り方と管理方法をご紹介したいと思います。
1時間あればできる! ぬか床の作り方
まずは材料を揃えてぬか床を作っていきましょう。1時間ほどあれば作ることができますよ。
【材料】(3ℓ容器分)
※きゅうりなら2〜3本漬けられる量なので、4人家族の1日分ぐらいまでは一度に漬けられます。
・ぬか 1kg
生ぬかと炒りぬかがあります。熱を加えていない生ぬかがオススメですが、お好みで。お米屋さんや通販で手に入ります。ぬかの部分には農薬が残留しやすいので、できれば無農薬のものが良いでしょう。
・塩 110g
精製塩ではなく、ミネラル豊富な自然塩を。
・昆布 2枚
・唐辛子 2本(ちぎっておく)
昆布はうまみ付け、唐辛子は防腐作用があります。
・水 800〜1000cc
ぬか床の様子を見ながら加えていきます。水道水ではなく、ミネラルウォーターを。
【作り方】
1.
ボウル(または鍋など)にぬかと塩を入れて混ぜます。
2.
水を三回ほどに分けて加えていきます。水を加えるたびに全体を混ぜ合わせ、まんべんなく水分が行き渡るようにします。味噌ぐらいの固さになれば良いです。
3.
ぬか床用の容器に移します。
ぬか床用の容器は、匂いがもれずに使いやすいホーローのものがオススメです。僕は野田琺瑯さんの「ぬか漬け美人」を使っています。

野田琺瑯さんの「ぬか漬け美人」
4.
ぬか床の中に昆布と唐辛子を入れます。
5.
最後に表面を平らにならして出来上がりです。
ぬか漬けに乳酸菌を繁殖させる「捨て漬け」へ
ぬか床ができたらすぐに野菜が漬けられるというわけではありません。ここからは”捨て漬け”という作業をして、ぬか床の中に乳酸菌を育てていきます。
捨て漬けとは、野菜の切れ端などをぬか床の中に入れて、野菜についている乳酸菌をぬか床の中に繁殖させていく行為です。捨て漬けに使う野菜はにんじんや大根のヘタの部分や、キャベツの外側の葉などが適しています。
今回の量でしたら、だいたいキャベツの葉1〜2枚程度です。これをぬか床に入れてよくかき混ぜ、その後は一日一回は混ぜ合わせます。そして3〜4日したら捨て野菜を引き上げて、新しく捨て野菜を入れて捨て漬けをします。これを3〜4回繰り返してぬか床から酸っぱい香りがしてきたら、いよいよぬか漬けが漬けられる状態になっています。
毎日のお手入れとそれを楽にする裏技
ぬか床管理の基本は、とにかく毎日かき混ぜること。なぜ混ぜる必要があるかというと、ぬか床の中に住んでいる菌は、酸素を好むものと、嫌うものがおり、かき混ぜないで放っておくと表面には酸素が多いので、酸素を好む菌が、底のほうには酸素が少ないので、酸素を嫌う菌が増えすぎてしまい、ぬか床の香りが悪くなってしまうためです。
なので、かき混ぜる時は、ぬか床の表面の部分と底の部分を入れ替えるように大きく混ぜることが肝要です。夏の間は気温が高く菌の繁殖が早いため、冷蔵庫に入れて保管するのも一つの方法です。その場合は菌の繁殖がゆっくりになるので、毎日ではなく2、3日に一度かき混ぜれば大丈夫です。
毎日かき混ぜるというと面倒に思うかもしれませんが、習慣になると全然苦ではなくなります。時間にしてものの一分足らず。僕は毎朝起きて台所で水をコップに一杯飲むついでに、ぬか床をかき混ぜています。気のせいかもしれませんが、毎朝手が菌に触れるとなんだか少し元気をもらった気分になります。
ということで今回は、ぬか床の作り方と管理方法をお伝えしました。ぬか床は同じ材料を使っても、人によって手にいる常在菌や部屋の中にいる菌が違うので、どれも同じ味にはならず、自分のオリジナルの味に育っていきます。ちゃんと管理すれば何十年ともちますので、今から育てて風味の変化を楽しむのも趣がありますよね。ぜひ、挑戦してみてください。